牡丹魚文獐本

粉青沙器とは「粉粧灰青沙器」の略称で、白土の「粉」を塗って装飾した陶磁器という意味です。様々な技法で装飾された粉青沙器には朝鮮時代の人々の美意識が表れており、とくに暗い色の素地と、白色の化粧土の絶妙な対比と、簡潔でありながらも親近感を与える文様が目を引きます。
横に長い円筒形の胴部をもつ獐本は、液体を入れて貯蔵したり、持ち運びやすくしたりするために作られた器です。一方の面には水草をくわえてのびのびと泳ぐ魚が、もう一方の面には生き生きとした牡丹の葉の文様が描かれています。魚はたくさんの卵を産むことから「多産」を象徴するとされています。また、中国では「魚」の発音が「余裕」を意味する言葉と発音が同じで、ゆとりのある生活を送ることを願う気持ちを込めて工芸品の文様として重用されました。

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