- 年代
高麗
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出土地点
開城付近
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材料
陶磁器 - 青磁
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寸法
高さ 15.3cm
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指定文化財
95
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番号
徳寿 2990
高麗青磁は9世紀末~10世紀はじめに制作が始まり、12世紀に全盛期を迎えた。美しい翡翠色の釉と象嵌技法が特徴である。この時期の青磁の釉は半透明であり、青磁の表面にはひびがなく、落ち着いた雰囲気の光沢を放つ。当時としては新しい工芸技術である象嵌技法は、文様を刀で彫り、白土や紫土などを嵌め込み、釉を塗って焼く。したがって、青磁は造形美や翡翠の色よりは、透明な釉により鮮やかになる象嵌の文様を極める方向に発展していった。13世紀中盤以降、モンゴル(元)との戦争により青磁の制作環境が厳しくなり、それ以前の透明な色が失われ、緑褐色や黄褐色の濃い色のものが多くなった。これは朝鮮時代に受け継がれ、「粉青沙器」の源流となった。
この香炉は高麗青磁を代表するもので、香りが発散される蓋、香を炊く胴部、それを支える足によって大きく分けられる。胴部には花びらが一枚ずつ付けられた蓮の花が表現されており、七宝文様が透かし彫りで作られた球形の蓋から煙が広がる構造となっている。胴部と足を繋ぐ蓮の花びらも別に制作され付けられており、三羽のウサギの装飾が施された足が香炉を支えている。
この香炉はそれぞれ違う形のものを機能的に組み合わせ、一つの造形に完成させており、陰刻・陽刻・透彫・象嵌など様々な技法が結集した高麗時代の傑作といえる。